DBS体験談
DBSを迷っていた私の背中を押してくれたのは主人でした。

  • 石松さん/67歳/女性/福岡県
  • 発症時年齢 59歳
  • DBS手術時年齢 66歳(DBS治療歴1年)

夜中に頻繁にトイレに行く度に主人を起こしていました。

パーキンソン病の症状が出現し始めたのは、8年ほど前でした。旅行先の鍾乳洞内の暗闇で足がすくみ大変怖い思いをしたのを覚えています。次第に、階段は怖くて一人で降りられなくなり、右肩がだるく、力が入りませんでした。6年ほど前からは、指先が小刻みに震えるようになりました。そして字は小文字になり、書きにくくなりました。

また、30代の頃からあった肩こりは、50代後半から症状が悪化し、整骨院での治療が頻繁になりました。整骨院から病院で検査するように勧められ、病院に行き検査したところ、パーキンソン病と診断されたのです。5年ほど前から姿勢が悪くなり、猫背がひどくなったため、友達から年取ったねと言われるようになりました。歩行も小幅になり、散歩では遅れるようになりました。また、指先の細かい作業動作が難しくなり、全身の動作も緩慢になってしまいました。

そのうちに、ジスキネジアが全身に出て、家事が十分できなくなってしまいました。食欲が落ち、食事を口に運んでもこぼすことも多くなりました。主人に手伝ってもらい食事した時もあります。さらに、トイレに1人で行くのが困難となり、夜中に頻繁にトイレに行く度に主人を起こしていました。入浴も主人に手伝ってもらうようになりました。

DBS手術の決心がつかずに迷っていた私の背中を押してくれたのは、「元気になって旅行に行こう」という主人の一言でした。

DBSについては、以前主人から話を聞いたことがありましたが、その時は手術の内容については詳しくは聞きませんでした。頭の手術と聞いただけで拒否反応があり、ただ怖いと感じたのを覚えています。失敗すれば寝たきり生活になるのではないかと思ったのです。

その後、パーキンソン病友の会の会報誌に、地元の大学病院の神経内科の先生と脳外科の先生が寄稿されたDBSに関する記事を読み、興味が出てきたので、主人が図書館から借りてきたパーキンソン病に関する本でさらに調べたり、主人がインターネットで調べた記事を読んで情報を集めたりしていました。

そして実際にその大学病院に行き、先生からDBS手術について説明を伺いました。動画で手術前、手術後のジスキネジア消失を初めて見た時には、自分は本当にあそこまでよくなるのかなと思っていました。「わからない事は何でも聞いてください」と先生はおっしゃってくださいましたが、何を聞いていいのか分からず、ほとんど主人が質問していました。親戚の者からは、頭の手術をすると早死にすると言われ心配になったことを覚えています。そして何より、私自身も、手術に対する恐怖心がなかなか取れませんでした。手術に失敗して、主人に今以上の負担をかけたくないと思っていたのです。

そんな中、DBS手術の決心がつかずに迷っていた私の背中を押してくれたのは、「元気になって旅行に行こう」という主人の一言でした。

友達との会食や、映画、コンサートの誘いを断らなくてよくなりました。

そして、思い切ってDBS手術をして良かったと思っています。主人に頼っていた家事が分担してできるようになり、主人の負担を減らすことができ嬉しいです。そして友達との会食や映画、コンサートの誘いを断らなくてよくなり、しばらくあきらめていた生活を取り戻すことができました。以前より気持ちも前向きです。

DBSをやってよかったと思う点:
夜間のトイレに一人で行けるようになった。
入浴の介助がいらなくなった。
ジスキネジアが消失したので、買い物など外出が楽しくなった。
家事がある程度できるようになり、主人の負担を軽減できた。
食欲が出てきた、体重も回復してきた。

DBSを考えていらっしゃる方にアドバイスやメッセージをお願いします。

先生との信頼関係を作るのが最も大事だと思います。手術に対して不安、怖さがあるのは当然ですが、先生から「どんなことでも聞いてください」と繰り返し言っていただいたのが安心感につながりました。
私自身、なかなか手術の決心がつかずに迷っていました。そのときに背中を押してくれたのが、「元気になって旅行に行こう」という主人の一言でした。当時、主人はパーキンソン病友の会でDBS経験者の方から手術後の経過について話を聞いてきていました。当然良い話ばかりではなく、問題点も多く聞いたようですが、最後に手術はやってよかったですかと聞くと「もちろん私は良かったと思っています」とお答えになったそうで、DBS経験者のお話も、大きな励みとなりました。

(2016年6月)

主治医のコメント

私が最初に石松さんを拝見した際に、お困りの症状をお聞きしたところ、薬効オフ時間(※1)の症状が辛いことと、ジスキネジア(※2)だとおっしゃっていました。
パーキンソン病がご専門である前医の先生からしっかりとした薬物治療を受けて来られて、その上で、日常生活に支障が大きくなってきたとの事でした。薬物治療を継続しながら、少しずつDBSについてもお話していくようにしました。
その後、当院で行っています、様々な多職種メンバーからDBS適応について評価を受ける「DBS適応評価入院(※3)」にも前向きに取り組まれました。

もちろん外科的な治療法ですので、様々なご不安や、ご心配もあったと思います。しかし、当初から印象深く覚えていますのは、御主人の笑顔と献身的なサポートです。そのおかげで、ご本人の不安などが随分軽減されたのではないかと思います。DBSはもちろん患者さんご本人に対して行う治療ですが、パーキンソン病治療はお一人で付き合うのではなく、ご家族や私達、医療者みんなでサポートしていくものです。そういった意味では、介護される方にとってもメリットがある治療でありたいと願っています。今回ご主人の介護負担が減り、お二人で家事など分担されたりして日々の生活を楽しく送られていると伺い、とても嬉しくなりました。
ぜひこれからも、お二人の共通の趣味である旅行など楽しまれて、充実した毎日をお過ごし頂きたいと思います。

  • ※1 お薬が効いていない時間
  • ※2 身体が勝手にくねくねと動いてしまう状態
  • ※3 約2週間程度入院していただき、パーキンソン病の病歴、診察、服薬状況、認知機能、精神症状の有無やお薬(レボドパ)に対する反応性などを確認します。各専門家がそれら様々な評価を行い、全員が集まってその方のDBSの適応や刺激部位、今後の注意点など最終判断します。

監修:樋口正晃 先生(福岡大学病院 神経内科)

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