パーキンソン病の本質は脳内のドパミン欠乏なので、治療は薬によるドパミンの働きを補うことが主体になります。
治療薬は大きく次の3グループに分けて考えることが出来ます。
レボドパとドパミンアゴニストを合わせてドパミン補充薬といいます。
レボドパは脳内に入ってドパミンに変換されて作用します。パーキンソン病の治療として最も基本になる薬で、最も効果がある薬でもあります。パーキンソン病治療においてなくてはならない薬で、レボドパを用いずに治療できる患者さんはいないと考えられています。欠点としては作用時間が短いため、初期の患者さんでも1日3回程度、進行期になると1日6回もしくはそれ以上服用が必要になる事です。以前は、早期から服用すると効かなくなりやすいと考えられていましたが、今日ではそういったことは否定され、無闇に服用量を増やさなければパーキンソン病の経過に悪影響をもたらさないと考えられています。
ドパミンアゴニストは化学的に合成されたドパミンによく似た物質です。ドパミンよりも効果は落ちますが、長時間作用する長所があります。今日使われているドパミンアゴニストはほとんどが1日1回タイプであり、安定した効果と利便性を実現しています。レボドパに比べて、吐き気、低血圧などの副作用をもたらしやすいのが欠点です。また、強い眠気や急に眠ってしまう突発性睡眠発作のリスクがあるため、服用している場合は車の運転や危険を伴う作業はできなくなってしまいます。
その他の薬としてはレボドパの吸収を助けたり、体内のドパミンの分解を抑えて薬の効果を増強する補助薬があります。その他に、直接ドパミンの働きは補わないものの、ドパミン不足による脳の神経回路の働きを補正する非ドパミン系治療薬があります。
初期の患者さんの標準的な治療は、レボドパかドパミンアゴニストのどちらかで開始します。その後、症状の進行に合わせてもう片方のドパミン補充薬を加え、さらに病状に合わせて補助薬や非ドパミン系治療薬を組み合わせて治療を続けていきます。パーキンソン病の治療薬は脳の疾患の中でも最も開発が進んでいる分野ですが、今のところ単一の薬で生涯を通して治療できることはほとんどなく、むしろ多くの薬を組み合わせて薬同士の短所を補い合うように治療していきます。薬でチームを作って治療していくイメージを持ってもらうとわかりやすいでしょう。