本態性振戦と治療法

本態性振戦の治療方法

お薬による治療

本態性振戦にはβ遮断薬という、高血圧や狭心症などの治療によく使用されている薬が処方されます。この薬は交感神経のたかぶりを抑えるように作用しますが、その作用によって手指や首の筋肉への交感神経の刺激が和らげられて、ふるえが弱まると考えられています。

β遮断薬でふるえを十分に抑えられない場合や、β遮断薬を服用できない患者さんには、抗不安薬や抗てんかん薬などが処方されることもあります。


手術による治療

これら薬物治療で満足いく効果がない場合には外科的治療を検討してもいいでしょう。

外科的治療には、「脳深部刺激療法」、「凝固療法」、「集束超音波治療」等いくつかの手術方法があります。

外科的治療でQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)が改善した患者さんもいらっしゃいます。
「ふるえ」に悩まれている方は、お医者さんへのご相談を検討してみてください。

手のふるえがひどくて、茶碗やコップをうまく持てない、字が書けない、などの症状に悩んでいる人は、決して少なくありません。

  脳深部刺激療法 凝固術 集束超音波治療
保険適応 保険適応 保険適応 保険適応ではない
両側・片側 両側 片側のみ 片側のみ
可逆・不可逆 可逆 不可逆 不可逆
調節性
刺激する範囲を調節

凝固する範囲を調節
×
調節が難しい
開頭 開頭する 開頭する 開頭しない

脳深部刺激療法

頭蓋骨に小さな穴を開けてふるえの原因となる部位に電極を植え込みます。
その電極を用いて電気刺激をすることで、ふるえの症状を改善させる治療方法です。
世界ではすでに15万人以上の患者さんがこの治療を受けています。
健康保険の適応の治療です。(次ページから、脳深部刺激療法について詳しくご説明をします。)

凝固術

頭蓋骨に小さな穴を開けて熱凝固針を刺入し、ふるえの原因となる部位を凝固させます。
健康保険の適応のある治療です。古くから行われている治療法であり、MRIの導入などにより治療技術は向上しています。
脳深部刺激療法との違いは、凝固術は不可逆的な治療で、脳深部刺激療法は可逆的な治療です。

集束超音波治療

MRIを見ながらふるえの原因となる部位に向けて超音波を集束させて凝固破壊します。
超音波が頭蓋骨を貫通するため、従来の手術療法のように頭蓋骨に穴をあける必要がありません。

執筆貴島 晴彦 先生(大阪大学医学部附属病院 脳神経外科 教授) 

 

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