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講演会レポート
パーキンソン病患者さんと家族のための公開講座 (2018/02/25)

パーキンソン病治療の選択肢は増加
手術療法は時期を的確にとらえて検討を

2月25日、福岡で「パーキンソン病患者さんと家族のための公開講座」(共催/日本メドトロニック、サンケイリビング新聞社)が開かれました。専門医が最新の情報を講演。Q&Aの時間には、患者さんの質問に丁寧に答えてくれました。
その一部を紹介します。

魚住武則先生
産業医科大学病院
認知症センター センター長
座長 魚住武則先生
森下登史先生
福岡大学病院
脳神経外科 講師
講演 森下登史先生

自分らしくよりよい生活を送るために、知っておくべきパーキンソン病の治療
―薬物治療と新たな治療法
講演・森下登史先生

ふるえなどの症状がでる病気
診断はMRIやドパミン量の検査をします

パーキンソン病は、脳内のドパミンという物質の減少が原因で、手の震えや動きの緩慢、すくみ足などの症状が起こる病気です。症状は片側から発症するのも特徴で、進行すると、体が傾く側弯、首が下がるなどの体幹症状、幻覚、幻聴、うつなどの精神症状、認知機能の低下なども起こり、寝たきりの状態に至るのも珍しくありません。

一部遺伝的な要因もわかっていますが、一般的に10万人当たり100〜150人、およそ1000人に1人に発症するといわれています。

パーキンソン病かどうか、同じような症状を呈するほかの病気と鑑別するために、頭部MRIやドパミントランスポーターシンチ検査などで、頭の中にドパミンが足りているかどうかを調べます。

また、パーキンソン病の人はカフェインの血中濃度が標準の3分の1程度なので、血液中のカフェイン濃度で診断する手法も登場しています。

初期はドパミンを増やす薬物療法で治療
効果は波があります

服薬が主な治療法です。初期には脳内のドパミンを増やす薬で、症状が改善します。しかし、長期にわたって服用するうちに、薬の効果は短くなっていきます。薬が効いた状態の「オン」、薬が切れた状態の「オフ」を、一日に何度も繰り返してしまうウェアリングオフと呼ばれる現象が起こります。

患者さんによってはウェアリング・オフと同じ頃から、薬の副作用として、意志と関係なく勝手に手や足、唇などが動いてしまうジスキネジアも出るようになります。

ドパミン補助薬、ドパミン作動薬など、薬の種類はたくさんあります。患者さんの症状の現れ方を見ながら、薬の種類と量を組み合わせていくのが基本的な治療です。神経内科のエキスパートと患者さんの信頼関係が重要になるのはいうまでもありません。

熱心に耳を傾ける参加者。メモをとる姿も多くありました
熱心に耳を傾ける参加者。メモをとる姿も多くありました

新しい治療法も登場
注目が高まる手術による「脳深部刺激療法」

新しい療法も登場しています。その一つが経腸療法。胃に穴をあけてチューブを挿入し、持続的に薬液を流す方法(持続注入ポンプを用いた経腸投与方法)です。ただ、装置を常に持ち歩かなくてはいけないませんし、手先が震える人は注入薬を注ぎ込むのが難しいという欠点もあります。

そこで、注目されているのが、脳深部刺激療法(DBS)。脳の深い部分に電極を植え込み、電気信号を送り込むことで脳の異常活動を制御する治療です。古くから振戦などの治療に使われていましたが、日本では、2000年にふるえ(振戦)に保険適応となり、ふるえ以外の運動障害にも2013年から保険適応になりました。全国70施設で手術が可能です。震えを止めるには非常に効果があります。

薬が効いている時(オン)と効いていない時(オフ)の差が激しい、ジスキネジアがある、オンオフはないけれど手足の震えが激しいなどの場合には、DBSを検討します。

正しい情報を理解し
適切な時期に適切な治療を受ける

パーキンソン病は、適切な治療を適切な時期に受けることで、健康寿命が長くなります。例えば、DBS手術も最適なタイミングで受けることで健康寿命を長くすることができます。調子のいい状態の時間を伸ばすのが治療の目的。服薬、手術、リハビリのすべてを組み合わせて長期的な治療計画を考える必要があるでしょう。

病気のために体が動かしにくいと運動不足になり、筋力が衰え、社会的な活動が低下し、ますます引きこもりになります。この負のサイクルは断ち切らないといけません。

患者さんはもちろん、サポートする家族も一緒に最新の情報を正しく理解して、自身にあった治療で前向きになっていってください。


患者さんの質問に、2人の先生が答えてくれました

Q1発症して5年、進行も早くなってきました。 これから先、心がけることは?

【魚住先生】5年というと薬の効果が下がってくる時期。その状態に合った薬を調整しなくてはいけません。主治医とよく話し合ってください。一般的には スポーツをしていたり、明るく活動的な生活をしている人の方が、進行が遅いようです。気持ちや考え方の持ち方も大きいと思います。

【森下先生】症状に応じてリハビリを取り入れたり、DBSも選択肢の一つと考えていいかもしれません。


Q2幻覚、幻聴は手術で軽減できるのでしょうか?

【森下先生】胃ろうを作る経腸療法にせよ、DBSにせよ、基本的には運動症状を抑える方法です。認知症や幻聴、幻覚、排尿症状などには効果は見られません。早めにどう対処するか、医師に相談しましょう。


Q3日常生活の過ごし方と、手術後の注意点を教えてください。

【魚住先生】パーキンソン病は全身病といわれるくらい、多岐にわたる症状が出ます。そういう病気だということを、まず理解してください。

【森下先生】DBSの目的は自分で出来ることの幅を増やすことですから、手術後に してはいけないことや注意することは特にありません。


Q4パーキンソン病と診断されてどう向き合っていったらいいか 悩んでいます。

【魚住先生】 外来で、突然診断されれば驚くことでしょう。パーキンソン病は根治出来ませんが、治療すれば症状が落ち着くのは確かです。患者友の会などの交流も勧めます。

【森下先生】 治療の成功には薬、リハビリ、手術のすべてを組み合わせることがとても大切です。それをよく理解して、治療を進めましょう。





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